インタビュー

シリカライムマガジン
左官のある風景 インタビュー 左官のある風景

素材から考える豊かな暮らし。建築家とつくる家。

約一年前に住まいを移し、住宅を新築されたMさんご夫妻。吹き抜けのリビングを中心に、天然素材の壁や床とシックなインテリアが溶け込んだ、心地の良い空間です。「いまの家に大満足」という結果をもたらしたのは、信頼できる建築家との出会いがあったからだとか。プロに任せたからこそ得られた快適な住まいについて、お話をお聞きしました。

Photographs by Nobuhiko Tamura(TN-Photography)

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――まずは住まいを変えられたきっかけを教えてください。

Mさん 主人が開業医をしているのですが、以前は車で20分ほどかけて通っていました。もう60代も半ばになりましたので、そろそろ通勤を楽にしたいと思い、病院の近くに住まいを移そうと考えたことがきっかけです。ほどなくして良い土地物件が見つかったので購入し、新築しました。

間取りは、1階が吹き抜けのリビングを中心にキッチンとダイニング、バスルーム、パウダールームです。中2階にゲストルームが一部屋、2階に夫のオーディオルーム(書斎)、プレイルーム、主寝室があります。ゲストルームやプレイルームは、ときどき娘夫婦が遊びにくるので、その時に利用することが多いですね。

森邸

森邸床はウォールナット、壁と天井は100%天然無機の塗り壁に統一。

――内装のこだわりを教えてください。

Mさん 以前住んでいた家を一度大々的にリノベーションしているんです。その時に担当してくださった建築家さんが、とても素材にこだわる方で。玄関は大理石、リビングの床は天然木で、スイッチプレートもプラスティックではなくて金属製だったくらい。その時に、漆喰の壁を初めて体験しました。

最初、その方から漆喰を奨められたときは正直すこし戸惑ったんです。私たち夫婦は壁はクロスしか知りませんでしたし、漆喰というと昔の蔵やお城のイメージしかなかったので、「ツルツルしていてヒビが入りやすいのでしょう」と思っていて。でも、いまは漆喰も違うんだと説明いただき、思い切って取り入れてみたら間接照明の陰影の出方がとても綺麗だし、想像以上に良くて驚いたんですね。なので新しい家も、絶対に塗り壁にしたいと最初から決めていました。

森邸

それで今回、日本建築家協会が発行している『こんにちは!建築家です』という冊子のなかから、理想の雰囲気に近く、さらになるべくご近所の方という基準で、河辺(こうべ)近さんという建築家を見つけて、設計をお願いすることにしました。

――数多ある壁材のなかからシリカライムを選ばれた理由は?

Mさん 友人に珪藻土を薦められて検討していたところ、河辺さんがシリカライムのことを教えてくださったんです。パンフレットを見たら、古代ローマやルネッサンス時代とか、ストラスブール大聖堂の修復材としても使われている素材だと知って。私の知人がストラスブールにいて、現地にも行ったことがあるんです。それで親しみが湧いたということもあります(笑)。

――いまの住まいで、気に入っているところはどこですか?

Mさん 私はやはり前の家での思い入れもあるので、照明にはこだわりがありました。うちは吹き抜けの構造ですが、メイン照明はないんです。すべて間接照明。

それも河辺さんに前の家に来ていただいて、「この照明の当たり方、素敵でしょう?」といってお見せして。そうやって光の当たり方や影の出方の好みを共有して、こちらの要望を汲み取っていただいた感じですね。それにみなさんおっしゃるように、シリカライムの壁は陰影の出方がとても綺麗ですね。

照明・日光など、さまざまな光の演出がされている。夜も落ち着いて過ごせますとMさん。

また、夫の趣味が音楽鑑賞なので、2階にオーディオルームをつくって、音響設備にこだわりました。シリカライムは壁表面が高気密で、雑な音を吸収してくれて、反響音が和らぐんですよね。だから音がダイレクトに、小さな音でもクリアに聞こえるんです。その効果で、オーディオルームのドアを開けて音楽を流すと、吹き抜けの上から音が降ってくるように聞こえて、高級ホテルにいるような雰囲気なんです。

ご主人こだわりのオーディオルーム。ゆったりと、ソファでくつろぐ至福の時。

壁の色は、もともとあった家具の色調に合わせて決めました。これも、いくつかサンプルを見せていただいた中から、最終的には河辺さんに薦められた色になりましたね。サンプルで部分的に見ると「この色が素敵!」と思えても、壁全体、あるいは部屋単位で見ると、「こっちの色のほうが合うね」ということもありました。

だから自分たちなりにこだわりを持っていましたが、全部自分たちの主張を押し通したというよりは、河辺さんありきです。やはり素材に関する知識は自分たちでは知り得ないことばかりですし、専門的なことは専門家に頼ることが大切だなと思いましたね。


窓を大きく取っているのが印象的。壁・天井ともに素材色の「NATURE(ナチュール)」で統一し、落ち着いた雰囲気を演出。

――約一年住まわれてみて、いかがですか?

Mさん 一つだけ後悔しているのが、コストを優先して、寝室のウォークインクローゼットだけクロスにしてしまったことです。クローゼットってそれぞれの服の匂いがこもるし、それこそ湿気が大敵な場所じゃないですか。実用的なクローゼットこそ、塗り壁にするべきでした。

それ以外は、まったく不満はないですね。作っている間は河辺さんとちょっとした意見の食い違いなんかもありましたが、最終的にオススメしてもらったものを選んでよかったと思いますね。一年経つと、些細なこだわりも気にならなくなるというか、馴染んでくるというか。

塗り壁特有のクラックも、定期的にメンテナンスしていれば、思ったほど気にならないです。それに、昨日はヒビがあったと思えば、翌日には分からないほど塞がっていたりするのを発見して、家も呼吸しているんだなと実感しました。見ていて面白いですよ。

壁について一言

Q:Mさんご夫婦にとって壁とは?

A:「空気」のようなものです。

Mさん そこに当たり前にあるもので、ベーシックなもの。だけど、一番大事なものです。
「空気」に嫌な匂いがあったり、湿っていると不快ですよね。でもそれは壁も同じで、普段は気づかないけれど、質が空間を変える。だから壁は、暮らしの快適さを支えてくれるものだと思います。家を建てる上では、たぶん、一番お金をかけるべきところだろうと今感じています。

河辺 近/Chikashi Kobe

【建築家プロフィール】

ken−ken有限会社 一級建築士設計事務所
河辺 近/Chikashi Kobe

1960年、横浜生まれ。浅野工学専門学校 建築工学科卒業後、
ヨーロッパを巡ったのち出江寛建築事務所へ入所。
1991年から独立し、現在は建築家として活躍するかたわら、
建築工学科の講師も勤めている。

本記事の物件詳細は、こちらのHPからもご覧いただけます。
http://ken-ken-a.co.jp/works/chumon/post-186/

DESIGN CONCEPT
食べ物や洋服にも好みがあるように、
人の考え・行動・感覚は様々です。
住宅に求めることも人それぞれです。
広いリビングで家族の会話を楽しめることだったり、
家族みんなで料理ができるキッチンだったり、
夏涼しく冬暖かい快適な性能を求める住宅だったり・・・
その個性を住まう人たちが十分に表現できる様な包容力のある空間を、
建築主とコミュニケーションを深めながら創りたいと思います。

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インタビュー インタビュー プロに聴く

株式会社小林幹也スタジオ代表 小林幹也さん

家具やプロダクトデザイナー、インテリアデザイナーとして幅広く活躍し、国内外にクライアントを持つ小林幹也さん。その傍らで「暮らしの市場」をコンセプトにしたショールーム兼ショップ「TAIYOUno SHITA」を運営されています。そして今年1月、内装新たに目黒区碑文谷にてリニューアルオープン。そんな小林さんに、日々どんな思いでデザインをされているのか、「モノ」づくりの視点からとらえる「空間」のあり方とは何か、お話を伺いました。

Photographs by Nobuhiko Tamura(TN-Photography)

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株式会社センプレデザイン代表 田村昌紀さん

「心地よい暮らし」をコンセプトに、海外の家具や洗練された雑貨が並ぶセレクトショップ「SEMPRE(センプレ)」。現在、路面店が 2 店舗、百貨店やショッピングビルのインショップが 4 店舗あり、インテリア好きなら誰もが知る存在に。2015 年 10 月、青山・骨董通りの「センプレ青山店」を大幅にリニューアル。センプレの代表的アイテムであるアルテックなど世界のデザイン家具はそのままに、若手クリエイターのプロダクトを導入。どんな基準で新たなアイテムをセレクトし、どんなこだわりで新しい空間を作り上げたのか、代表の田村昌紀氏にお話を伺いました。

Photographs by Nobuhiko Tamura