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フランスから日本へ。ブーム社来日に見る文化と左官 -Vol.2-

フランスから来日した水硬性石灰の窯元・ブーム社一行。
シリカライム代表・池田の案内で都内近郊を巡るなかで、彼らが本当の日本を感じたのはどこだったのか。
vol2となる今回は、その場所についてご紹介します。


4泊5日という、あまり時間のとれないなかでの来日となった今回。
私たちは、都内と関東近郊までという限られた行動範囲のなかで、日本の左官とその奥にある歴史や文化をご紹介したいと考えていました。

ところがいざ予定を立ててみると、”本物”が見れる場所が都内では意外と少ない。
もちろん、あることはあるのですが、思っていた以上に少ないのです。
まず都内で、歴史ある左官が日常的に見られる場所はというと、有名なのが東京駅。
あとは皇居外苑の旧江戸城桜田門、代官山にある旧朝倉邸などでしょうか。
旧朝倉邸は惜しくも開館時間が過ぎてしまったため東京駅へ訪れましたが、天井部分などはよく見えないので彼らにとっては消化不良な様子でした。

そこで、私たちはより身近に左官を感じられる場所へとご案内することにしました。

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まずは、東京都中野区の落合駅近くで、昭和27年から創業されている富沢建材株式会社さんです。
こちらに伺うと、いつも石灰や土などの素材や、左官職人さんの技術に関するさまざまなお話や情熱を伺うことができ、大変勉強になります。

お忙しいところ冨澤社長にご協力いただき、日本の左官はどんな道具や材料を使うのか、どんな技術があるのか、などをご紹介する貴重な機会をいただきました。
この様子は、工文社さんの『建材フォーラム2月号-新たな左官仕上げの挑戦-』に掲載いただいています。


見せていただいた竃(かまど)は、第一線で活躍されている左官職人の皆さんが、実演で完成させたという逸品。
三重県伊勢市にある名菓「赤福」さんにてこの光り輝くカマドが伝えられており、「伊勢磨き」と呼ばれる大変高度な技法が使われているそうです。
冨澤社長によるブログ「石灰と土のソムリエ雑記」にて、製作の様子や左官談義のもようが記されているので、ぜひご覧ください。


こちらは繊細な輝きを放つ「土佐漆喰磨き壁」のパネル。

製作者は、久保田騎志夫氏・有岡久喜氏だそうです。
吸い付くような手ざわりの精巧さに大変感心を示していました。

左官の道具である鏝(こて)の種類の多さや繊細な形状にも、日本ならではの細やかさが現れています。

歴史を重ねて習得した精巧な技術や、左官の道具に対するこだわり。
自国の文化を大切にするブーム社にとっても、それらは本当の、日本の美意識を感じる瞬間だったようです。

磨きの技を駆使した光る泥だんご。左官の技術がぎゅっと詰まったユニークな見せ方です。
子供にも作れるため、授業の一環やワークショップとしても人気があります。


なんとも濃く、充実した内容となった3日目。
ほかに左官が堪能できる場所はどこでしょうか、と冨澤社長へ相談したところ、埼玉県川島町にある遠山記念館という博物館が良いのではとご紹介いただき、4日目の予定を変更してこちらへ伺いました。

元・日興證券(現在のSMBC日興証券)創立者・遠山元一の遺志に基づき、昭和11年(1936)に建造されたそうです。

−− 遠山邸は、埼玉県比企郡川島町ののどかな田園風景の中に静かな佇まいを見せています。日興證券の創立者・遠山元一(1890-1972)が、幼い頃に没落した生家を再興し、苦労した母・美以の住まいになるようにと、昭和8年から2年7ヶ月の歳月を費やして完成させて大邸宅です。長屋門をくぐって表玄関までのアプローチ、また邸宅内の疊廊下を進んで、これからどんな景色や座敷が現れてくるのか、わくわくするような、奥深い邸宅美をお楽しみください。
(webサイトより「https://www.e-kinenkan.com/house」)


当時の最高技術を持つ大工や左官らに依頼し、今日では手に入れることのできない希少な材料がふんだんに使われているのだとか。
たしかに、細部に至るまで華美でありながらも、主張しすぎない洗練されたこだわりが感じられます。



部屋ごとに壁面の色が違うなど、コンセプトもしっかり伝わってくるので、進むほど次はどんな嗜好が凝らされているのかと楽しみになる邸宅でした。
また、左官を志す者は大方こちらへ足を運び、名工たちの技術を肌で学び取るそうです。
フランスで左官に関わっている彼らも、真剣な面持ちで観察し、技術について議論し、大変感銘を受けた様子でした。



一通り見終わったあと、一行は昼食もままならないまま大急ぎでシリカライムの事務所へ。
左官職人の野宮未葵氏と、節司(建築家)の不破博志氏を交えて、日本とフランス、それぞれの国の左官技法についての意見交換をしました。
お互いに有用な意見を話し合い、大変有意義な時間となりました。

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こうして、無事に視察を終えたブーム社一行。終始、日本の文化を全身で感じ取り、左官の技術を吸収することに注力されていました。


時代とともに移り変わる人や街。
そんななかでも、昔ながらの製法を守り、伝統的な仕事を受け継ぐ情熱は、国を超えて共通しています。
今回の訪問は、そのような情熱を持つ人々と技術を結びつけ、潜在的な感銘を共有する出会いとなりました。

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